#36〜#40
『神逆(しんげき)のタイタン』 #37
「恐らくはポセイドン」
不良が言った。
「ん!? ポセイドン・・・?」
外道が聞いた。
先程からの不良と外道の会話はまだ続いている。
「そうだ、ポセイドンだ」
「ポセイドンがどうした?」
「アイオロスは恐らく、ポセイドンの命を受けて動いたに違いない」
「どういう事だ? 意味が良く分からんが」
「くどいようだが、これらは全て俺の想像なんだが・・・」
「あぁ」
外道が相槌を打った。
「風の神アイオロスはポセイドンの命を受け、ティアマトの救援に赴いたのではなかろうか。 何せあの時のティアマトの相手はあの英雄ペルセウスなんだからな、ゼウスの血を分けた。 しかもその手には怪女メドゥーサの首を入れた籠を持っている。 そしてあの時のポセイドンにしてみれば、ペルセウスの出現は計算外の出来事だったはず。 いかにビッグ・スリー(ゼウス、ポセイドン、ハデス)の内の一神とはいえ、流石にあの場面にペルセウスが現れるとは予見できなかったに違いない」
「だから慌ててアイオロスを応援に、ってか?」
「そうだ」
「な〜る(程)。 しかしナゼ、風の神なんだ。 他のヤツじゃダメだったんか。 例えば、戦(いくさ)や戦(たたか)いの神なんかじゃ」
「それは俺にも分からん。 その時、ポセイドンの傍に他に誰もいなかったのかも知れんし、いても適当なのが見当たらなかったのかも知れん。 だが、アイオロスだった。 間違いなく風の神アイオロスだったんだ、ポセイドンの息子のな。 あの時、ポセイドンが選んだのは・・・。 恐らくはメドゥーサ・ルックを封じるためには風を使うのが一番だと考えたんだろう」
「ウ〜ム」
外道が話を止めて考え込んだ。
「・・・」
それは不良も同じだった。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
外道、不良、だけでなくその場にいた全員・・・つまり、秀吉、大河内、そして雪も何も喋ろうとはしなかった。
暫し、その場に奇妙な緊張感が走った。
皆が皆、不良の推理に思いを馳せていたのだ。
大海神ポセイドンの命を受けた風の神アイオロスの行為に。
しかも、不良のこの推理は的確に的を捕らえていた。
実は、ペルセウスがアンドロメダの鎖を断ち切った丁度その時。
こんな事が起こっていたのである。
古代ギリシャでは・・・
【注 : あの〜、分ってくれてるとは思ふヶど・・・。 このお話は “ふいくしよん” death DA 。 そこんとこ・・・よ・ろ・ぴ・こ】
・
・
・
・
・
つづく
『神逆(しんげき)のタイタン』 #37
「恐らくはポセイドン」
不良が言った。
「ん!? ポセイドン・・・?」
外道が聞いた。
先程からの不良と外道の会話はまだ続いている。
「そうだ、ポセイドンだ」
「ポセイドンがどうした?」
「アイオロスは恐らく、ポセイドンの命を受けて動いたに違いない」
「どういう事だ? 意味が良く分からんが」
「くどいようだが、これらは全て俺の想像なんだが・・・」
「あぁ」
外道が相槌を打った。
「風の神アイオロスはポセイドンの命を受け、ティアマトの救援に赴いたのではなかろうか。 何せあの時のティアマトの相手はあの英雄ペルセウスなんだからな、ゼウスの血を分けた。 しかもその手には怪女メドゥーサの首を入れた籠を持っている。 そしてあの時のポセイドンにしてみれば、ペルセウスの出現は計算外の出来事だったはず。 いかにビッグ・スリー(ゼウス、ポセイドン、ハデス)の内の一神とはいえ、流石にあの場面にペルセウスが現れるとは予見できなかったに違いない」
「だから慌ててアイオロスを応援に、ってか?」
「そうだ」
「な〜る(程)。 しかしナゼ、風の神なんだ。 他のヤツじゃダメだったんか。 例えば、戦(いくさ)や戦(たたか)いの神なんかじゃ」
「それは俺にも分からん。 その時、ポセイドンの傍に他に誰もいなかったのかも知れんし、いても適当なのが見当たらなかったのかも知れん。 だが、アイオロスだった。 間違いなく風の神アイオロスだったんだ、ポセイドンの息子のな。 あの時、ポセイドンが選んだのは・・・。 恐らくはメドゥーサ・ルックを封じるためには風を使うのが一番だと考えたんだろう」
「ウ〜ム」
外道が話を止めて考え込んだ。
「・・・」
それは不良も同じだった。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
外道、不良、だけでなくその場にいた全員・・・つまり、秀吉、大河内、そして雪も何も喋ろうとはしなかった。
暫し、その場に奇妙な緊張感が走った。
皆が皆、不良の推理に思いを馳せていたのだ。
大海神ポセイドンの命を受けた風の神アイオロスの行為に。
しかも、不良のこの推理は的確に的を捕らえていた。
実は、ペルセウスがアンドロメダの鎖を断ち切った丁度その時。
こんな事が起こっていたのである。
古代ギリシャでは・・・
【注 : あの〜、分ってくれてるとは思ふヶど・・・。 このお話は “ふいくしよん” death DA 。 そこんとこ・・・よ・ろ・ぴ・こ】
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つづく
『神逆(しんげき)のタイタン』 #38
「我らが盛にして聖なる大海神ポセイドン。 誠に残念なご報告を致さねばなりません」
風の神アイオロスが言った。
ここはエウポイア島アイガイ沖。
その海中深くにあるポセイドンの神殿。
そこに今、神殿中央玉座に鎮座しているポセイドンに向かい、右膝を見事な大理石の床に着け、握った右拳(みぎ・こぶし)を左胸心臓付近に当て、頭(こうべ)を垂れている息子アイオロスの姿があった。
くどいようだが、風の神アイオロスはポセイドンの息子である。
「いかが致した?」
ポセイドンが聞いた。
「ハッ!! お言い付け通り、ティアマトの救援に赴きました所、両者に我が存在を悟られまいと目立たぬよう接近したのが災いし、時既に遅く、この私(わたくし)めが到着致しました正にその時、ペルセウスが例のメドゥーサの首を籠から取り出(い)だし、それをティアマトめの目の前に突き出し、ティアマトを石にしようとしていたのでございます。 すぐさまティアマトの眼(まなこ)を閉(と)ずべく強風を起しましたが、残念ながらそれはティアマトから見て右斜め後方上部からの横風となったため、片目のみ閉じさせるのが精一杯。 無念、ティアマトは石に」
「ん? 『片目のみ』 とな?」
「ハッ!! 片目のみ。 右目でございます」
「つまりティアマトは石にされる直前、片目を瞑(つぶ)ったという事か?」
「御意」
「そうか。 石にされる直前、ティアマトは片目を瞑ったか・・・。 そうかそうか。 片目を瞑ったか」
納得するかのようにそう言って、
(ニヤッ)
ポセイドンの相好(そうごう)が崩れた。
そして続けた。
「面白い!?」
「!?」
「面白いぞ、これは・・・」
「・・・」
アイオロスにはポセイドンのこの言葉の意味が分らなかった。
だが、そんな事など全く意に介さず、
「フフフフフフフフフフ。 フハハハハハハハハハ・・・。 アッ、ハハハハハハハハハ・・・。 ワッ、ハハハハハハハハハ・・・・」
ポセイドンが笑った。
ポセイドンだけが笑った。
何の事だかサッパリ理解出来ないという顔をして自分を見つめているアイオロスの目の前で・・・
高らかに。
・
・
・
・
・
つづく
『神逆(しんげき)のタイタン』 #39
「して・・・。 我らが盛にして聖なる大海神ポセイドン。 ペルセウスめをいかが致しましょうや?」
アイオロスがポセイドンに聞いた。
「捨て置け」
「!?」
「放って置けという事よ」
「し、しかしこのままでは他の者に示しが・・・。 それに石と変わったティアマトは?」
「構わん!! どちらも放って置け!!」
「し、しかし・・・」
「ソチは余の命(めい)が聞けぬと申すか?」
「あ!? い、いえ!! け、決してそのような事は!!」
「なら、放って置け。 放って置くのじゃ」
「は、はい!!」
アイオロスが渋々、承服した。
「ウム。 下がって良し」
「ハッ!!」
アイオロスがその場を去った。
その姿に一瞥をくれる事もなく、ポセイドンが独り言を呟いた。
「楽しみにしておるぞ、ティアマト!! ソチの復活の日を・・・」
と。
更に一言、こうも付け加えていた。
嬉しそうに笑いながら、楽しそうにワクワク感丸出しで、
こう・・・
「それに・・・。 フフフフフ。 未来から来るナゾの人間・・・。 お前もな・・・。 フフフフフ・・・」
と。
そして真顔に戻り、考え深げに視線を移した。
ジッと遠くに。
それからもう一度、意味あり気に、
(ニヤリ)
ほくそ笑んだ。
これが・・・
ペルセウスがアンドロメダの鎖を断ち切った丁度その時、古代ギリシャで起こっていた・・・
出来事である。
・
・
・
・
・
つづく
『神逆(しんげき)のタイタン』 #40
「で?」
外道が先に口を開いた。
「ん?」
不良が聞いた。
ここは応接間。
まだまだ、不良と外道の会話は続いている。
「どうするつもりなんだ?」
「・・・」
不良は黙っていた。
「・・・」
外道も黙った。
「・・・」
「・・・」
不良はジッと外道の目を見つめている。
自分の考えをどう外道に伝えたら良いか、考えているようだった。
二人の、否、その場の沈黙が続いく。
再び、外道が口を開いた。
「当然、何か考えているんだろ? だから俺を呼んだ。 しかも今回はコイツまで」
と、
(クィッ!!)
顎で雪を指し示して。
「あぁ、そうだ。 標識が必要だからだ。 だからお前達を呼んだんだ。 特に、その娘がな・・・。 その娘が必要だから呼んだんだ」
漸(ようや)く、不良が口を開いた。
雪に、
(チラリ)
一瞥をくれながら。
「標識? どういう事だ?」
外道が聞いた。
「あの女を助けるためには、ジャンプしなければならないからだ」
「ジャンプ?」
「そうだ! ジャンプだ!! 古代へのな。 古代への大ジャンプをしなければならないからだ」
「!?」
「前に一度やったな。 アレだ」
「前に一度やったって・・・。 アレか? あの時の?」
「そうだ!! あの時のアレだ」
外道と不良はパラレルワールドでの出来事を言っていた。
つまり、あの時、あの場所で、外道の記憶の中に不良が肉体ごと外道を伴ってワープしたあの時の事だ。
不良が続けた。
「今度は女の記憶の中にジャンプする!!」
「だがら帰って来るために標識が必要という訳か? そしてそれがコイツ」
再び、
(クィッ!!)
顎で雪を指し示して外道が聞いた。
「その通りだ」
「しかし、何のためにジャンプなんか・・・。 ティアマトを叩くためにジャンプが必要なのか?」
「いいゃ。 ティアマトを叩くためにするんじゃない」
「え!?」
「ティアマトを叩くためにするジャンプじゃない」
「どういう事だ?」
「ティアマトは叩けんのだ」
「ティアマトは叩けん? 言ってる意味が分らんが」
「いいか破瑠魔、良く聞け」
「・・・」
「いやしくもティアマトは神。 しかも肉体を持たない。 否、神に肉体はないか。 言い換えよう。 ティアマトは実体を持たない。 ただ、精神のみ。 否、コレも違うか。 精神という表現は微妙に違う気がする。 霊体・・・。 否、違う。 ウ〜ム。 ・・・」
ここで不良はチョッと考えた。
『ハッ!?』
何かナイスな表現を思い付いた。
「意識!? そうだ!? 意識だ! 意識!! 意識のみ。 ティアマトは実体なしの意識のみ。 その意識のみの存在のティアマトを叩く術(すべ)を俺は知らん。 だからだ」
「だからジャンプか?」
「そうだ」
「しかし、ジャンプしてどうするつもりだ?」
「それは後で話す。 長くなるからな」
「後で?」
「あぁ、後でだ。 標識の件が先だ」
「・・・」
外道は黙った。
ジッと不良の眼(め)を覗き込んでいる。
不良の真意を測りかねているのだ。
「・・・」
不良も又、黙っていた。
やはり外道の眼(め)を覗き込むようにして。
「・・・」
「・・・」
暫し、その状態が続いた。
先に口を開いたのは外道の方だった。
「そうか、分った。 後で聞こう。 だが、ナゼ、コイツが標識・・・?」
三度(みたび)、
(クィッ!!)
外道が顎で雪を指し示した。
「・・・」
何も言わず不良が身を乗り出した。
視線を外道から雪に移した。
そして聞いた。
「確か、妖乃 雪(あやしの・ゆき)だったな」
「うん」
「では頼む、妖乃 雪。 お前に俺の標識になってもらいたい」
「え!?」
雪が・・実は全く驚いてはいなかったのだが・・チョッと驚いた振りをした。
話の成り行き上のリアクションだ。
(チラッ)
外道を見た。
目で外道の確認を取ったのだ。
雪のその視線を受け、
「お前はどうなんだ?」
逆に、外道が雪に聞いた。
「うん。 いいヶど」
雪がここまで外道に言ってから不良を見た。
「でも、なんでアタシ?」
これに外道が呼応し、
「だからさっきも聞いたが理由(わけ)を聞いてからだな、コイツを選んだ理由(わけ)を」
そう雪に代わって不良に答えた。
不良が雪の眼(め)を見つめて言った。
「それはな」
ここで一旦、不良は言葉を切った。
ジッと雪の眼(まなこ)を覗き込んだまま。
そして・・・
・
・
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・
・
つづく