#41#45




『神逆(しんげき)のタイタン』 #41




「お前の体の中には俺の血が流れているからだ。 輸血した俺の血がな。 だからだ。 お前達の関係と同じだ」


毅然として不良が雪に言った。


「あ!? そっか」


雪が納得した。


「あ!? な〜んだ、そんな簡単な事だったか。 勿体(もったい)付けやがって」


それは外道も同じだった。


「まぁ、そう言うな。 これもブログのアクセス数維持のためだ。 この位、勿体付けとかんと読者に飽きられるからな。 ま!? 読者サービスってヤツだ」


「読者サービスか・・・。 なら、仕方ない。 ・・・」


外道が納得した。


だが、


次の瞬間、



(クルッ!!



外道が振り返った。



(ピッ!!



君を指差した、君を。

今これを読んでいる君だ、君!!

そしてほざいた。


こう・・・


「おぃ! 毒者!! ン、じゃなっくって 読者!! ン、じゃなくって 読者タン。 良かったらこのブログの宣伝しちゃってネ。 アクセス数増えっと、ウ・レ・ス・イ・から・・・。 と〜〜〜っても」


って。。。




!?




「で、どうなんだ?」


不良が外道に聞いた。

無感情でだ。

それに対し、



(クィッ)



雪を顎で指し示して、


「コイツがいいなら、いい」


外道が答えた。

それを聞き、



(チラッ)



不良が雪を見た。

その視線を受け、


「うん。 いいょ」


雪がオッケーした。


「そうか。 なら、頼む」


不良が頼んだ。

相変わらず無感情でだ。

ここで不良に外道が聞いた。


「だったら本題だ。 ジャンプしてどうするのかを詳しく聞かせてくれ」


瞬間、



(キッ!!



不良の表情が引き締まった。


「あぁ。 いいだろう」


キッパリとそう答えた。

ここからは不良と外道の会話となる。


「先ず、あの女の記憶を頼りに今のではなく古代のヘリコン山へ行く、ヒッポクレーネの泉のある」


「ヘリコン山? ヒッポクレーネの泉?」


「そうだ。 ヒッポクレーネの泉のあるヘリコン山にだ。 ギリシャにある」


「ギリシャに?」


「あぁ」


「何のために?」


「ムーサ達に会うためにだ」


「ムーサ達?」


「芸術や知識の守り神だ。 全部で九人(くにん)いる」


「そのムーサ達とやらに会ってどうするんだ?」


「馬を借りる」


「馬?」


「そうだ、馬だ。 その名をペガサスという。 知っているな、あのペガサスだ」


「あぁ。 ペガサス位なら俺も知っている。 でも、アレは伝説だろ? そんなモンが本当に・・・」


外道が言い終える前に不良が断言した。


「否、いる。 ペガサスは確かにいるんだ。 あの女の記憶が正しければな。 ペルセウスがいた以上、メドゥーサの首が存在した以上、あの女の記憶が正しければペガサスは間違いなくいる。 ただ、普通のヤツラにはそれが見えんだけだ、神馬(しんめ)だからな。 ポセイドンとメドゥーサの間に生まれた神馬だからな、ペガサスは。 だが、俺なら見る事が出来るはずだ、必ず。 そう、必ず・・・。 勿論、お前達もな」


「ウ〜ム。 かも知れん。 しかし、仮にいたとしてペガサスなんか借りてどうする気だ?」


「勿論、空を飛ぶんだ。 それに乗って」


「空を飛ぶ?」


「そうだ。 空を飛ぶんだ」


「空なんか飛んで何をするんだ?」


「アイオロスを止める」


「アイオロスを止める?」


「そうだアイオロスを止める。 そのためには空を飛ばなくてはならん。 アイオロスは空を飛んであの場所に来たんだからな。 だからだ。 だからアイオロスを止めるためにはどうしても、否、絶対に空を飛ばなくてはならん。 だからだ。 ・・・。 何せ俺は・・・」


そう言い掛けて、一瞬、



(チラッ)



不良が雪を見た。

それから続けた。


「ソイツと違って・・・」


ここで再び、視線を外道に向けた。


「俺は空は飛べんからな」


「あぁ。 そういう事か」


「あぁ。 そういう事だ」


「だが、何のためにアイオロスを止めるんだ?」


「ティアマトの石化を完成させるためにだ」


「ティアマトの石化を完成させるために?」


「そうだ。 ティアマトの石化を完成させればヤツは死ぬ。 だからだ」


「成る程・・・。 しかし、簡単に言うが、そんなに上手く行くのか? 見込みはあるのか?」


「それはやってみなければ分らん。 ムーサ達が快く貸してくれるかどうかも分らんし、アイオロスを止められるかどうかも・・・な」


「もし、ムーサ達が貸してくれなかった時はどうするんだ?」


「その時は、作戦変更だ」


「作戦変更?」


「あぁ、作戦変更だ」


「・・・」


意味が分からず外道は黙っていた。

その外道の眼(め)をジッと見つめて不良が言った。


「ヘルメスのサンダルを盗む」


「え!?


「ヘルメスの空飛ぶサンダルを失敬するのさ」


「ヘルメスの・・・?」


「そうだ。 盗人(ぬすっと)の守り神ヘルメスの空飛ぶサンダルをチョッとな。 チョッと失敬するのさ」


「盗人の守り神の物を失敬か・・・。 ソイツはチト面白い。 お前にしちゃ上出来だな、不良。 だが・・・。 盗人に守り神なんているのか、本当に?」


「あぁ、いる!! 面白い事にな。 面白い事に古代ギリシャにはいたんだ、盗人の守り神が。 盗人の守り神ヘルメスがな。 もっとも、このヘルメスという神は同時に商業や貿易の神でもあるんだが。 その盗人の守り神を出し抜いてチョッと失敬するのさ、サンダルをな」


「だが、戦闘向きでないお前の能力(ちから)で本当に大丈夫なのか? 出来るのか、そんな事が?」


「まぁ、何とか成るだろう」


「『まぁ、何とか』 って、そんな事で本当に・・・」


それを遮って不良がキッパリと断言した。


こう・・・


「心配無用だ。 俺には取って置きの秘密兵器がある。 取って置きのな・・・。 だから心配するな。 必ず盗んでみせる盗人の守り神からな。 その一番大切なサンダルをな。 フフフフフ・・・」


不良が笑った。

不敵にも。


「・・・」


その姿を外道は黙って見ていた。

意外だという表情をして。

珍しく感情を露(あらわ)にしている不良が珍しかったのだ。


そして不良が笑い終えたのを見計らって、


「所で、さっきから気になっているんだが、その暗燈篭 芽枝(あんどうろう・めえだ)とかいう女はどこにいるんだ? ソイツに会わせてくれ」


外道が聞いた。


「それはダメだ!! 否、今はダメだ」


不良が即座に否定した。

いつも通りクールに。


「ナゼだ?」


外道も即座に聞き返した。


「ティアマトにばれる可能性があるからだ。 俺の計画がな。 それに俺達の存在もな。 もっとも、既にもう俺の方はばれてはいるが・・・。 しかし、お前達の存在はまだばれてはいない。 だから今はまだヤツに俺の計画とお前達の存在を悟られたくないんだ。 ジャンプの時まではな、知られたくないんだ」


「な〜る(程)。 でも、居場所位は教えてくれてもいいだろ? それもダメなのか?」


「あぁ、それは構わん」


「どこだ?」


「ここだ」


「へ?」


「正確には、この裏手の旅館だ。 俺の診察室にいる」


「俺の診察室にいるって・・・?」


「そこで寝ている」


「寝ている? 三日もか?」


「あぁ、三日もだ。 意識がまだ戻らんのだ」


「フ〜ン。 ・・・。 あ!? 家族は? その女の家族は?」


「分らん」


「分らんって・・・」


「一人暮らしだからだ。 否、恐らく一人暮らしだからだ。 何度、旅館の予約簿の連絡先に連絡を入れても誰も出ん。 だから家族には連絡がつかん」


「なら、警察には?」


「届けてはいない」


「届けてはいないって、マズイんじゃないか? それは」


「いいゃ、マズクない」


「?」


「下手な事をしたら、却(かえ)って女の命が危ないからだ。 だがらだ。 だから警察には届けてはいない。 もっとも、ここの連中はそうしたそうだったがな。 だが、俺がそれを許さなかった」


「な〜る(程)」


外道が納得した。

そして飲み掛けのトアルコトラジャを、



(クィッ!!











飲み干した。







つづく







『神逆(しんげき)のタイタン』 #42




「では・・・。 破瑠魔!! 妖乃!! 頼んだぞ!!


そう言って、


「ウ〜ム」


ウォーキングシューズを履き、ジャケットにパンツといった軽装に着替えた不良が指先に念を込めた。

メガネは掛けたままで。


ここは旅館 『秀吉のゆかた』 内にある不良の診察室。

そこにある診察用ベッドの上に仰向けに寝かされている暗燈篭 芽枝の両コメカミに両手指先を軽く触れ、それに不良が念を込めた所だ。

芽枝の記憶、古代の記憶の中にジャンプするために。

いよいよその時が来たのだ。

そしてその様を、外道と雪が見つめている。

二人共真剣な面持だ。

瞬(まばた)き一つしない。

しかし、秀吉と大河内はこの場にはいなかった。

立ち会う事を不良が許さなかったからだ。


その理由(わけ)は・・・


一つには、念法を使う所を外道と雪以外の者に見せたくなかったからであり、

一つには、秀吉達を巻き込みたくなかったからだった。

何せ今度の相手は例えその姿形は怪物とはいえ、紛れもなく神なのだから。

何が起こるか分からないからだ。


再び、


「ウ〜ム」


不良が念を込めた。

より一層強く。


瞬間、



(パッ!!



不良の指先が光る。


それは一瞬にして、



(ビリビリビリビリビリ・・・)



輝きに変わる。

不良の全身を包む輝きに。


瞬時にその輝きは、



(ピカッ!!



頂点に達する。


更に、


「ウ〜ム」


不良が念を込める。


即座に、



(ピキピキピキピキピキ・・・)



不良の指先から触手が延びる。

娘の脳内に。



(ピシピシピシピシピシ・・・)



触手が脳内を巡る。

娘の脳内を。


それに反応し、



(ピクピクピクピクピク・・・)



娘の体が痙攣する。

小刻みに。


一直線に触手は、



(ピシピシピシピシピシ・・・)



人間の脳の記憶形成に重大に関わる分野と言われている海馬に向かって突き進む。


そして、



(ピタッ!!



終に、触手がその娘の大脳内海馬に到達した。


すると、



(スゥー)



不良の体が透き通り始めた。


「ウ〜ム」


更に、念を込める不良。

それと共に不良の体の透明感が増して行く。

その姿を通して背後が見える。


「ウ〜ム」


最後にもう一度、念を込めた。

それと同時に、



(スゥー)



消えた。

不良が消えた。

不良が完全に消えた。

最早、不良の体はそこにはない。

ジャンプしたのだ。

娘の記憶の中に。

娘の持つ、古代の記憶の中に。

暗燈篭 芽枝(あんどうろう・めえだ)を救うために・・・自らの体ごと。


ここを以って終に・・・


不良孔雀・・・


大ジャンプ完了・・・











か?







つづく







『神撃のタイタン』 #43




ここはとある地方のとある場所。

そこに今、着古したねずみ色のフードとガウンに身を包んだ、3人の混じりっ気なしの白髪頭(しらが・あたま)の老婆が立っている。

その姿形は、まるで西洋画等で時々見掛ける魔法使いの老婆のようだ。


ウ〜ム。


だが、奇妙だ。


この3人の顔には目がない。

人間としての他のパーツは全部揃っているというのに。

それに口はあるが、歯もない。


ウ〜ム。


様子が変だ。

何かおかしい。


否、違う!?


あるぞ!? あるある! 目と歯がある!!


しかし、それらはたったの一つずつしかない。

そのたったの一つずつしかない目と歯を、3人で使い回している。

そうしながら何かブツブツ話し合っている。



こんな事を・・・



老婆 A  「いつ又3人、会うじゃろか?」


老婆 B  「雷? 稲妻? 雨の中?」


老婆 C  「いゃいゃ、太陽が沈む前」


老婆 A  「落ち合う場所は?」


老婆 B  「あの荒野」


老婆 C  「そこで会うのじゃ、人間に」


ここで 『ニャー』 という、猫の鳴き声がした。


老婆 A  「おや? あの声は・・・。 可愛い可愛い魔女の猫、ワシらの灰色メリーちゃんかぇ?」


今度は 『ゲコゲコゲコ』 カエルの鳴く声。


老婆 B  「おや? 今度は・・・。 ヒキガエルかぇ? ワシらの使いをしてくれる・・・」


老婆 C  「2匹とも、今すぐ行くょ。 待っといで・・・」


最後は3人一緒に何やらいわく因縁めいた言い方で、


「良(い)いが悪いか? 悪いが良いか? 飛んで行くのさ 霧の中」


と、ナゾの言葉を発した。

そして腰を低く屈め、今にも空に向かって飛び上がらんという格好をした。


だが次の瞬間3人同時に、


『ハッ!?


『ハッ!?


『ハッ!?


何かに気が付いた。

そして飛び上がる動作を止め、嬉しそうに、


「イッ、ヒヒヒヒヒ・・・」


「イッ、ヒヒヒヒヒ・・・」


「イッ、ヒヒヒヒヒ・・・」


さも意味有り気に笑った。

その様(さま)は、それを見る者の背筋をゾッとさせてもおかしくない程不気味だった。

何せ、目と歯のない顔で笑ったのだから。

それから口々にこう言った。


老婆 A  「気配じゃ!?


老婆 B  「人間の気配じゃ!?


老婆 C  「アイツの気配じゃ!?


老婆 A  「じゃが、おかしい!?


老婆 B  「じゃが、妙じゃ!?


老婆 C  「じゃが、変じゃ!?


老婆 A  「ここで逢(お)ぅたゾ、人間に」


老婆 B  「予定外の今、ここで」


老婆 C  「あの荒野ではなく、ここで今」


(3人一緒に) 「ならば今すぐ始めょか、あそこじゃなくって、今、ここで」


3人が手に手を取って、輪踊りを始めた。

今度は、こんな事をブツブツ呟きながら。


(3人一緒に) 「運命操る3姉妹。 手に手を取って駆け巡る。 海でも陸でもどこへでも。 ぐるぐる回って魔法の輪。 お前3歩に、ワシ3歩、更に3歩で、全部で9。 シーッ!!


老婆 A  「秘密だょ」


老婆 B  「内緒だょ」


老婆 C  「悟られちゃいけないょ」


(3人一緒に) 「運命統(す)べる・・・魔法陣」


これは呪文である。

そしてその3人の老婆が輪踊りをして地に描いた物は、紛(まぎ)れもなく魔法陣だった。

もっとも、描いたとはいっても肉眼で見る事の出来るような代物(しろもの)ではないのだが。


そこに不良孔雀(ぶら・くじゃく)登場。


老婆達が感じ取った気配は、不良の気配だったのだ。

たった今、その場所に大ジャンプして来た不良の気配だったのだ、その3人の老婆が感じ取ったのは。

勿論、未来からその場所に大ジャンプして来たのだが。

暗燈籠 芽枝(あんどうろう・めえだ)の記憶を辿って。


不良がそうとは知らず、その魔法陣の中に一歩足を踏み入れてしまった。

こんな事を呟きながら。


「全く・・・。 良(い)いのか? 悪いのか? 何なんだここのこの天気は・・・」 (これはシェイクスピア 『マクベス』 に出て来る有名なセリフをちょこっとアレンジ。 = “ So foul and fair a day I have not seen.” 又、この辺はやはり同作品の冒頭部分を若干アレンジして使わせて頂いております。 沙翁ょ、許したまえ)


と。


そぅ。


今、不良がブラっと現れた所は、他は雲一つなく完璧に晴れている。

それもカラッと。

だが、今いるその場所だけは・・その一角だけが・・ナゼか濃い霧に包まれているからだった。

しかもジメッと。


そして不良はその後、こうも続けていた。


「第一、一体ここはどこだ? ヘリコン山の近くなのか? 俺は狙い通りちゃんと来れたのか、過去のギリシャに?」


と。











その時・・・







つづく







『神撃のタイタン』 #44




「入った!?


「入った!?


「入った!?


という声がした。


『うん!?


素早く、不良が声のした方に振り返った。

意味有り気に目のない顔でニヤニヤしながら自分を見ている 否 自分の方に顔らしい物を向けている3人の老婆に気付いた。

不良が目を見張って3人を見た。

チョッと驚いたのだ。

その顔形の不気味さに。

否、

それ以上に、その3人が自分のすぐ傍にいるにも拘らず、全く気付かなかった事にだ。

いくら濃い霧の中だったとしても、不良程の使い手に全くその存在を悟られないとは、その3人はただ者ではないからだ。


「何だ!? 何だなんだ、コイツ等は? ・・・」


思わずそんな言葉が口を突いて出ていた。

その場の異様さからだった。

そして不良がその老婆達に声を掛けようとした。


だが、その前に3人が口を開いた。

老婆 A B C の順に。

意味不明だが聞きようによっては予言めいた事を。


「バンザーイ、人間。 運命に弄(もてあそ)ばれし者」


「バンザーイ、人間。 運命に操られし者」


「バンザーイ、人間。 運命に逆らえぬ者」


と。


これを聞き、


「それは予言か? 待てよ・・・。 目なし、歯なしの3老婆・・・。 ウ〜ム」


不良も口走っていた。

そして、


『ハッ!?


何かに気が付いた。

同時に3人に聞いていた。


「グライアイ!? お前達はグライアイか? グライアイなのか、あのメドゥーサ 否 ゴルゴン三姉妹の妹の?」


それを聞き、


「あぁ、そうじゃ。 人はワシラをそう呼んでおる」


3人が声を揃えて答えた。

それから名を名乗った。

老婆 A B C の順に。


「ワシがペプレードー」


「ワシがエニューオー」


「ワシがデイノー」


と。


「そうか。 やはりグライアイだったか」


不良が納得したように独り言を言った。

そして続けた。


「と、いう事は・・・。 ここは間違いなく古代ギリシャ。 だが、グライアイがいる以上、ここはゴルゴンの国の入り口。 どうやら俺は来る場所を間違えたようだな」



(あの〜。 しつこいようですがこの物語は 『ふいくしよん』 なんですね。 だからですね。 ここは古代ギリシャ の!? はずなのに・・・。 『え!? 日本語通じちゃうの?』 つー、突っ込みはナシでオネゲエいたしやす : コマル)



それを聞き、


「いいゃ、間違えてなんゾおらん。 お前はここに来るべき運命だったのじゃ」


と、ペプレードーが言った。


次に、


「自分の運命を知るためにじゃ」


と、エニューオーが。


最後に、


「ワシらの予言を聞くためにじゃ」


と、デイノーが。


「お前達の予言を?」


不良が聞き返した。

ここからは不良対ペプレードー、エニューオー、デイノーの順に会話が進む。


(ペプレードー) 「そうじゃ。 ワシラの予言をじゃ」


(不良) 「フン。 くだらん」


(エニューオー) 「じゃが、聞かねばならん」


(不良) 「そんな事より、ヘリコン山の場所を教えてくれ」


(デイノー) 「教えてやるょ。 じゃが、その前に予言を聞かねばならぬ、ワシらのな」


(不良) 「・・・」


(ペ) 「お前はもう運命の輪の中に入っておるんじゃからのぅ」


(不良) 「運命の輪?」


(エ) 「そうじゃ、運命の輪じゃ」


(不良) 「・・・」


(デ) 「足元を見てみょ」


(不良) 「・・・」


(3人揃って) 「良ーくな」


『ん!?


不良が自分の足元に視線を移した。


すると・・・











そこに・・・







つづく






『神撃のタイタン』 #45




「こ、これは・・・!?


不良は驚いた。

いつの間にか自分の足元に、地面から噴出すように眩(まぶ)しく輝く銀箔色の円形の輪があったからだ。

その輪を繁々と見つめながら呟いた。


(不良) 「こ、これは魔法陣・・・か?」


(ペプレードー) 「あぁ、そうじゃ。 魔方陣じゃ」


(エニューオー) 「だからお前は、運命を知らねばならぬ」


(デイノー) 「予言を聞かねばならぬ」


(3人揃って) 「ワシらの予言をのぅ」


(不良) 「なら、いいだろう。 聞いてやる。 言ってみろ」


ここで3人がそれぞれ同じ方向を指差して、口々にこう言った。


(ペ) 「ヘリコン山はあっちじゃ」


(エ) 「ヒッポクレーネの泉はあっちじゃ」


(デ) 「真っすぐあっちじゃ」


(不良) 「・・・」


不良は黙って聞いていた。


(ペ) 「じゃが、お前はヘリコン山には行かぬ」


(エ) 「そのズーっと手前のアナウロス川じゃ」


(デ) 「そこを渡った所までじゃ、お前が行くのは」


(不良) 「・・・」


(ペ) 「つまり、お前はムーサ達には会わぬ」


(エ) 「代わりに違う者に会う」


(デ) 「空を飛ぶために」


(不良) 「・・・」


(ペ) 「お前は会うんじゃからのぅ、あるお方と」


(エ) 「さるお方と」


(デ) 「さる高貴なお方と」


(不良) 「さる高貴なお方?」


(ペ) 「あぁ、そうじゃ。 さる高貴なお方じゃ」


(エ) 「人間ごとき、遠く及ばぬ程高貴なお方じゃ」


(デ) 「人間など目通り適わぬ程高貴なお方じゃ」


(不良) 「・・・」


(ペ) 「そのお方にお前は試される」


(エ) 「試されるんだょ、お前は」


(デ) 「厳しくのぅ」


(不良) 「・・・」


(ペ) 「多分、お前は授かる」


(エ) 「きっと授かる」


(デ) 「間違いなく授かる」


(不良) 「何をだ?」


(ペ) 「ある物じゃ」


(エ) 「ある物じゃ」


(デ) 「ある物じゃ」


(不良) 「・・・」


(ペ) 「お前の希望を適(かな)えるため」


(エ) 「お前の目的を果すため」


(デ) 「必要な物じゃ」


(不良) 「・・・」


(ペ) 「じゃが、目的は果せぬ」


(エ) 「失敗するんじゃ」


(デ) 「お前は目的を果せず、失敗するんじゃ」


(不良) 「・・・」


(ペ) 「お前は死ぬょ」


(エ) 「お前は死ぬんだ」


(デ) 「ポセイドンの投げたトライデントでのぅ」 【 Trident = 三叉の戟(ほこ)・・・これ即ち、神戟(しんげき)なり】


そう言ってから3人が目のない顔で夫々(それぞれ)の顔を見合った。

それから、


「イッ、ヒヒヒヒヒ・・・」


「イッ、ヒヒヒヒヒ・・・」


「イッ、ヒヒヒヒヒ・・・」


再び・・・


不気味に笑った。

嬉しげに笑った。

意味ありげに笑った。


瞬間、



(スゥ〜)



3人が消えた。

濃く、深く、暗〜い霧の中に。


この言葉を残して・・・











(3人揃って) 「良(い)いが悪いか? 悪いが良いか? 飛んで行くのさ・・・霧の中」







つづく